本来の災害救助・防災訓練はおざなりにして、防災訓練という名の自衛隊の軍事演習にご執心の石原都知事
9月3日に都内各地で行われた大規模防災訓練の災害対策本部長を務め率先して陣頭指揮を執った石原都知事だが本物の災害対策にはあまり熱意を感じられない。
●「三宅の災害でも知事に陣頭指揮を執ってほしい」と話す三宅島住民の声と裏腹に、伊豆諸島・三宅島の雄山から8000メートルの火山灰があがり、噴石が島を襲った翌日から「英気を養う」と言って2度目の夏休みに。全島避難の必要性について30日、訪問先のマレーシアでの記者会見で「火山噴火予知連が公式な見解を述べてくれて初めて判断ができる。組織として災害対策をするものにとって、うわさの域で右往左往できないし、(住民を)右往左往させたら危機管理が乱れる」と語っている。もっともなことだが「(不法入国の外国人などによる)大きな騒擾(そうじょう)事件すらですら想定される」という自身の発言はうわさの域どころではないのだが、そんな戯言に右往左往させられたかのような「総合防災訓練ビッグレスキュー東京2000」とはいったい何だったのか? 石原都知事の発言をふりかえると
●アジア大都市ネットワーク21の提唱都市会議などに出席するため、マレーシアを訪問した石原慎太郎知事。 「対策本部で陣頭指揮をとらなければならないのでは」と尋ねられると、「もっと大事な仕事でマレーシアに来ている」などと語った。三宅島の災害対策ほど重要な仕事はないと思うのだが。夕方には優雅にホテルのプールで遊泳を楽しみ「東京には災害対策のために副知事も局長もいる。休憩中にプールに入って何が問題なんだ」
(月刊誌『Voice』99年8月号の対談で)このような発言を繰り返してきた石原都知事の意向に沿って行われた2000年の防災訓練の実体は例えば、
「陸海空の『三軍』を使った災害時の合同大演習をやってもらいたい、東京を舞台に。絶対日本のためになるし、東京のためになる。北朝鮮とか中国にたいするある意味での威圧にもなる。せめて実戦に近い演習をしたい。相手は災害でも、ここでやるのは市街戦ですよ」(『正論』3月号のインタビューで)
「中曽根(康弘元首相)のサジェッション(示唆)で、9月3日に地震対策総合大演習を、自衛隊の三軍を動員しておこなう。不法入国の外国人による大略奪が新宿、池袋で起きるかもしれない。それに対処するデモンストレーションとして、戦車、装甲車で街を封鎖する訓練もしてほしいといった」(2000年4月9日、自衛隊の式典にて)
「不法入国した三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪をくり返し、大災害時には大きな騒じょう事件すら想定される」「そういうときに、みなさんに出動を願って、都民の災害の救急だけでなく、治安維持も遂行していただきたい。九月三日には陸海空の三軍が参加する防災訓練で、軍隊の意味を国民、都民に示してほしい」
訓練後の石原は「想定されるかもしれない外国からの侵犯に対しても、まず自らの力で自分を守るという気概を持たなければだれも本気で手を貸してくれない」などと発言している。結局のところ、「ビッグレスキュー東京2000」とは住民不在、災害救助は後回しにした自衛隊の軍事演習に他ならない。石原は銀座に戦車を走らせたいなどとも言っていたそうだ(戦車はさすがに実現しなかったが代わりに自衛隊の装甲車が走っている)。中国などでしばしば軍事力を誇示するための戦車などを大動員した軍事パレードが見られるが、石原がやりたいのもまさにこれだろう。ただ石原が自衛隊を指揮してみたかっただけとの声もある。